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2018年12月20日木曜日

One for all, All for one


神戸製鋼が建設を強行した石炭火力発電所の増設の中止を求める裁判がはじまりました。
神戸製鋼と関西電力を相手に立ち上がった住民のみなさんの勇気に、
心から敬意を表したいと思います。

弁護団の一人の方が、神戸製鋼のラグビーに例えて、訴訟の意義を話しておられました。
私も、「One for all, All for one」の精神が少しでもあれば、
絶対に石炭火力発電所の増設なんて強行できないと強く思いました。
原告の一人である廣岡豊さんの陳述は素晴らしいものでした。
思わず、裁判所で涙が込み上げたんで、
無理を言って、全文を送ってもらいました。
ぜひ、お読みいただき、裁判へのご支援をお願い致します。

   ☆ ☆

原告の廣岡豊と申します。
私は52年前灘郵便局に就職しました。当時の灘区はJRの六甲道の駅付近も鉄さびだらけで異様な臭いが漂っていました。夜になると灘浜の製鉄所の煙突から煙と一緒に赤い炎が昇っているのを何度も見ました。「洗濯物が外に干せない」、「ススで汚れてしまう」との声もよく聞きました。田舎で育った者には、同じ県内でもこんなに違うのかと驚きました。
これらの影響か二人の子どもはぜん息を発症し、発作を起こすたびに夜病院に何度も通ったことは忘れられません。公害と認定された長女には国から給付金が出ましたが、しかし苦しみは解消しません。
公害患者の叫びや家族、地域の人達の声やそして長い運動が行政や企業を動かし大気汚染は当時と比べると格段に改善されました。その改善は個々の市民、中小事業者、零細な運輸事業者の方々を含め、広範な層のコンセンサスとたゆまぬ努力の積み重ねがあってこそ、ここまで進めることができたと思います。
しかし昨年の環境影響評価準備書に対する市長・知事の意見にも「大気汚染物質の環境基準を達成していない地点が存在する」と、指摘しています。
神戸市南部地域は、かつて公害健康被害補償法による地域指定を受けていた地域であり、自動車NOxPM法のもとでは、窒素酸化物やPM2.5の排出総量抑制が求められており、まだ改善の途上です。こうした状況にあるにもかかわらず、住宅地から400mのところに巨大な石炭火力発電所が2基増設されるとしています。増設され2基が稼動すると年間で新たに窒素酸化物601t硫黄酸化物289tばいじん80tと大量に排出されることになります。当然PM2.5もふえます。
さらなる大気汚染の改善が必要な地域にこれまでの努力を横取りし、無にするような大量の汚染物質の排出源となる石炭火力発電所の増設は、私企業の利益のため社会にツケ回しするもので到底許されません。
建設し、稼働をはじめれば、その運転は30年以上の長きにわたります。
神戸で住まいする私たちの安全安心な暮らしのうえに、水銀なども含め汚染物質が大量かつ長期に降り注ぐことになります。
 私たちは過去の過ちを繰り返すことはできません。
 今の、また未来の子供達に私たちが味わってきた同じ苦しみを経験させることはできません。

次に地球温暖化・気候変動の問題です。
 2018年夏は、全国でも神戸市灘区でも、集中豪雨による洪水・土砂災害、異常な暑さ、何度となく台風の襲来などの気象災害が続きました。神戸市でも10万人以上に避難勧告が出され、灘区篠原台では土石流による甚大な被害が発生しました。
神戸海洋気象台のWEBによる「神戸における気温の長期変動」のデータを見ますと1897年~2016 年の神戸地方気象台の観測による気温の経年変化では、「年平均気温に長期的に有意な上昇傾向がみられ、100 年あたり 1.3℃の割合で上昇し、要因の一つとして地球温暖化に加え、ヒートアイランド現象の影響も加わっていることが考えられる」と指摘しています。
また、神戸市の今年8月の報道発表では、7月末に熱中症搬送車数は668名を数え、7月末現在で過去最多を数えたと発表しました。
さきほどの神戸海洋気象台のWEBでも「兵庫県の真夏日は、将来気候で夏から秋にかけて増加がみられ、今世紀末には1ヶ月以上の日数の増加が予測されています。」と記しています。
世界的にも自然災害の激甚化が進行しており、地球温暖化による気温の上昇、雨の降り方、量も大きく変わり、熱波や寒波、豪雨・干ばつなどの極端な気候が続き破壊的な動きがすでに私たちの神戸の暮らしのなかで進行しています。

今、地球上には様々な問題があります。紛争であり、核兵器の問題など解決しなければならない課題はたくさんあります。しかし多くは人間が理性を発揮して話し合えば解決の道筋が出てくるし解決もします。
地球温暖化・気候変動は自然が相手です。一度自然の歯車が狂い、破壊的な動きを始めると人間の理性や手では止めることはたいへん困難な課題です。
今、世界の科学者の一致した見解は「温室効果ガスを急いで減らさなければ、地球上の生命に対して気候変動が破壊的な影響を及ぼす」と警告し、地球温暖化防止へ各国で努力が始まり世界は脱炭素社会へ舵を切っています。日本も2050年には温室効果ガスを80%削減することを閣議決定しています。いま国を挙げて二酸化炭素の削減が求められるなかで、大量の二酸化炭素を排出させる石炭火力発電の建設は世界の流れに逆行し将来世代を苦難に陥れる重大な誤りです。
神戸市民は阪神淡路大震災という未曾有の災害を経験しました。以来防災には人一倍取り組んできました。地球温暖化による気象災害に対しても、それが二酸化炭素による人為的要因によるものとして、その削減のため徹底した省エネ、太陽光発電などの自然再生エネルギーの積極導入に先進的な取組を行い、成果をあげつつあります。
こうした状況のなか、既設の発電所と併せ年間1400万トンにのぼる二酸化炭素を排出する今回の石炭火力発電所の建設は、これまでの市民の努力を無にし、地球温暖化に起因する気象災害の発生に少なからず寄与するもので、神戸に立地するトップ企業の行為とはとても思えない、恥ずかしいことです。
私たち神戸市民は、この神戸の地で災害の発生に対処しつつただ平穏、かつ安全に暮らすことを望んでいるにすぎません。
温暖化対策は、お国に任せておけばいいというのではなく、地域における広範な取組の積み重ねがあってこそそこに展望があるように考えます。
次の世代 子どもや孫たち、さらには次の世代もが健やかに暮らしていける土台となる安定した気候や自然をこの神戸の地に残すことは私たちに求められている最低限の義務ではないでしょうか。二酸化炭素を大量に排出する石炭火力発電所の建設は中止・廃止しかありません。
最悪の立地、最悪の燃料による神鋼の石炭火力発電所の建設・稼働の差止めを強く求めて私の陳述とします。
               2018年  12月 19日 廣岡 豊

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